【フェルメール】「地理学者」の存在感

地震と停電で混乱の続く東京ですが、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催されている「オランダ・フランドル絵画展」にフェルメールの「地理学者」が来日しています。こんな状況なので作品の状態が気になりましたが、節電のために開館時間は短縮されているものの、特に問題なく展示されていました。今日の渋谷はかなりの人出でしたが、夕方の展覧会場は比較的ゆったり鑑賞できる環境です。

この展覧会はドイツ・フランクフルトにある「シュテーデル美術館」の所蔵作品によるもので、最初のエリアで目につくのはルーベンスレンブラントの、いかにも画家の作風を表した作品です。そして、フランドル絵画ではメジャー路線のブリューゲルやホルス、それにフェルメールと組み合わせて作品が展示されることの多いヤン・ステーンが並んでいるので、アムステルダムデンハーグにでもいるような気分になりますね。

そしていよいよ、メインディッシュともいえるフェルメールの「地理学者」とご対面です。描かれた学者の精悍な眼差しと、フェルメールの真髄ともいえる「室内に差し込む外光」の描写の持つ存在感に圧倒されました。単なる色彩でも構図でもなく、総合的な印象が素晴らしいのです。「光」とともにフェルメールの特徴でもあるテキスタイルの重厚感あふれる描写も、いかにもでした。この作品と対になると言われている「天文学者」はパリのルーブル美術館で見ましたが、確かに雰囲気は似ています。

意外な発見は、ファン・フリートの「デルフトの旧教会の内部」。教会に差し込む外光のとらえ方はフェルメールを思わせます。ただ、近づいてみるとデッサンが稚拙なことに気づいてしまうので、やはりフェルメールとは一枚も二枚も格が違いますね。印象派のような明るい絵画が好きな人には物足りないかもしれないけれど、これはこれで味のある展覧会ですよ。

http://www.vermeer2011.com/index.html