【ドラマ】インサイドマン -囚われた者-

全4話のミニシリーズ「インサイドマン」は、英国で現在進行形で起きている監禁事件と米国の刑務所で死刑執行を待つ囚人が犯罪捜査に関与するプロットが並行して描かれるが、最後の最後までどう交錯するのかがわからない。双方の関係者が出くわすシーンで、見ている側が何となく安堵感のような思いを抱くことになる。このポイントに向けて周到に組み立てられたシナリオは、なかなか重厚で見応えは十分だ。

主人公といえる牧師ハリーは、身内を守るためにちょっとした嘘をついただけだったはずが、どんどんドツボにハマってゆく。それは妻や息子にも影響し、思いもかけない悲劇につながってしまうのだが、ハリーがその事実を知るのは後になってからだ。一方の囚人グリーフは、限られた情報を的確に読み解き、深掘りするべきポイントを教える。彼の面会には、記録係として死刑囚仲間のディロンがすべての会話を記憶するという設定も面白いが、彼が実在するようにも見えるが、もしかしたらグリーフの妄想なのかとも思わせる展開になっている。

欧米のドラマでは、「誰かのため」を思って悪事に手を染めた結果、悲劇を招いてしまう物語は定番だ。それはキリスト教の価値観にも影響を受けていて、自己犠牲だったり守るべきものを守る義務感だったりするのだが、同時に宗教対立やダイバーシティの阻害要因にもなっていると言える。「誰かのため」の「誰か」が異なることによって、人々は分裂し対立してしまう。宗教とは科学的根拠のないことを信じることなので、自らが乗っている既定路線の方向性を疑うのは難しいのだろう。