【ドラマ】コーチ・プライム ~勝利の方程式~

大学アメリカン・フットボールのチームを追うアマゾンプライムのドキュメンタリーで、ジョージア州にあるジャクソン州立大学(JSU = Jackson State University)タイガースのコーチを務めるディオン・サンダースが主人公。彼のニックネームが「プライムタイム」なのだ。この大学は、いわゆるアフリカ系アメリカ人のために作られた「歴史的黒人大学」という位置づけで、チームにも黒人が多い。コーチ・プライムの息子シェデュールも、QBとしてプレーしている。

ジャクソンが洪水に見舞われて練習すらできなくなってしまったり、コーチ・プライムの移籍が噂されたりという環境の中で、タイガースはリーグ戦で全勝優勝を果たす。興味深いのは、「人格の優れたコーチと優秀な選手たち」ではなく、試行錯誤しながら成長してゆく過程が描かれるところ。洪水被害の中でも地元や家族、OBが選手を支援したり、選手が母親に甘えていたりする場面は、いかにも米国的な雰囲気だ。素行と悪い選手を退部させる際には、全員を集めて意見を募り、最終的には多数決で決めてしまう。これも民主的といえばその通りだが、意思決定プロセスとしては中途半端で、僕としてはすっきりしない決着の仕方だった。

成果を挙げたコーチ・プライムは、さらに上位の大学へと移籍してゆくのだが、そんな彼でもゲーム中の指示はブレる。本人はブレているとは思っていないのだが、選手はそれがブレていると感じてしまう。これは、現実の組織には常に起こることで、上司は方向性を示している自負を持っていたとしても、部下にしてみれば「示されていない」と思っている状況はよく目にする。もちろん、自分がこの上司にあたる場合もあったし、その上司が社長だということもあり得る。プロを含めたスポーツの世界でも普通に起こる事象だということを、あらためて思い知らされた。