【ドラマ】ボクらを見る目

原題の「When They See Us」の意味を活かした良い邦題のようにも思うが、カタカナの「ボク」という中途半端な一人称を使ったことで、骨太な本作の内容を集約させるにはミスリードになったように思う。「アフリカ系」という表現も北アフリカのアラブ系を無視したようで使いたくないので敢えて避けるが、黒人やヒスパニックの少年たちが理不尽な捜査と裁判で収監され、後に真犯人の自白ですべてが明らかになる。実話に基づいた物語なので、意図的に警察や司法を貶めようとするような流れは見られない。

ただ、真犯人の自白がなければ、客観的な証拠がない状況では「推定無罪」を適用するしかなくなる。それが法の下の平等ということなのだが、犯罪者が野放しになってしまうリスクも常につきまとう。米国では本流という概念があったWASPの判事や検事、あるいは捜査官を一方的に悪く見ることが適切とは思わないが、彼らの中にある先入観や固定概念はいったん捨てて考えるべきだろう。言葉では簡単だが、実行に移すのは容易ではない。

俳優陣としては「ブル」でチャンク役のクリストファー・ジャクソンがスキンヘッドではない髪型で登場するので、最初の登場場面では誰だかわからなかった。また、「ベイツモーテル」でノーマを演じたヴェラ・ファーミガは検事補として冷静な雰囲気を漂わせているところが興味深い。演じ分けの見事さは、さすがの演技力だ。