【ドラマ】パムの秘密 ーある主婦の知られざる顔ー

「パムの秘密」にしろ「ある主婦の知られざる顔」にしろ、このドラマの本質を伝えてはくれないし、それは原題である"The Thing about Pam"にしても大して変わらない。実話に基づいて製作されたドラマだが、物語の中心となる疑惑の主婦パムを演じるレニー・ゼルウィガーの演技と役作りに、鬼気迫るような圧倒的な何かを感じるのだ。「ジュディ 虹の彼方に」でオスカーを取っている女優だが、ソシオパスであることを窺わせるクセの強い女性パムの「嫌らしさ」を見事に表現している。

ドナルド・トランプにも通じるところがあるが、自分の信じている価値やストーリーのためなら、真実を歪めてしまう。いや、その歪んだ真実こそが本当の真実なのだと自らも信じ込み、そして周囲も巻き込んでゆく。恐ろしい現実ではあるが、そんな人物はどこにでもいるものだ。自分の嘘をごまかすために嘘を重ねながら、そこに合理性を見出してしまい、他人から見れば明らかにおかしいロジックを、さも当然のように主張する。周囲は反論しても仕方ないので消極的な同意をしてしまうが、その安易な行為が状況をどんどん悪化させてしまうのだ。

最終エピソードには、実際のパムの映像がエンドクレジットの中でエピローグのような形で見られる。これをレニーの映像と対比させると、いかに見事な演技だったかがわかる。単に真似をしているというよりも、「その言葉を発するときの心理状態を把握した上で、その心理をなぞっている」という印象なのだ。パムの人物像にはまったく共感を抱かないが、心理状態を裏読みして見進めても面白いだろう。