【ドラマ】ミスター・メルセデス3

ミスター・メルセデスのシーズン3は、すでにブレイディは存在しないものの、ルーの意識にのりうつったかのような描写が続き、ストーリー全体に確固たる存在感を示している。映画「ジョーカー」の評として僕は「何らかの形で虐げられている人の負のエネルギーは、周囲がそれを作り出したのであって当人の非ではないという論理は、社会秩序を保持するためには非常に危険だ」と、このブログに書いている。このシーズン3も似たようなところがあるが、それは皆が自分の非を棚に上げてブレイディを悪者にして満足していること。それはまさに、「自分がよからぬことをしたのは、あいつが悪いからだ」という責任転嫁の論理だ。この点を、もう少し掘り下げてくれてもよかったように思う。

このシーズン3での本当の悪者は、モリスでもありアルマでもある。ちょっとしたことで感情を爆発させ、目の前の人物に危害を加えるアルマの怪演は素晴らしく、CVの水野ゆふも見事に違和感のないアフレコを当ててくれた。しかし、僕の推すMVPはモリスを演じたガブリエル・エバート。不良高校生がそのまま大人になってしまったような表情や仕草に、何とも言えないリアルさがあった。歩く時の体の揺すり方や、相手を脅すときの表情などだ。

アイダが高校教師になっていたのは、いかにも都合がよい設定で、ジェロームが探偵稼業に加わるいきさつにもかなり無理がある。そんな中で、ホリー役のジャスティン・ルーペは演技力も存在感も光り、うえだ星子のCVも若干やり過ぎ感は否めないものの、ホリーの性格をうまく際立たせていた。ジャスティンは「キング・オブ・メディア(原題:Succession)」にも出演しているが、まったく異なる役作りだったことで演技力を改めて示してくれた。