【映画】モービウス

ストーリーの展開がなんとなく「ジョーカー」を思わせるもので、過去にその人物にトラウマを負わせた周囲、あるいは社会にこそ責任があるという雰囲気が漂っていた。ただ、「ジョーカー」の描き方がそのロジックに終始したのに対し、本作では「そんなトラウマを負わされたとしても、許されることとそうでないことがある」という正論に導かれるところに大きな違いがある。釈然としない気持ちは残るものの、「ジョーカー」を見終わったときに比べれば納得感は数段高い。

全編を暗い雰囲気が漂う中、CGを駆使した映像効果は本当に見応えがあった。ファミリー狙いのスパイダーマンとは異なり、ダークな世界観を貫くことで、こんな見せ方が可能になったのだろう。その意味では、スパイダーマンより「ヴェノム」に近い作品でもあり、「ヴェノム」よりはテーマがわかりやすいとも言える。あまりテーマにこだわらずに映像だけを楽しむ方が、余計な感情を抱かずに済むのかもしれない。

マット・スミスとジョレッド・レトの演技は好感を抱くという雰囲気ではないが、その徹底ぶりは見事だ。障害を持つ部分をクローズアップさせる演技も含め、演技であることを見る側が忘れてしまうほど。テクニカルなサポートがあってこそだとは思うが、リアルな動きや表情はこの世界観を作り出すのには欠かせなかったはず。続編を匂わせる終わり方だったので、次回作にも期待したいところだ。