【ドラマ】ファーゴ シーズン5

シーズンの立ち上がりの段階では登場人物に共感できず、設定もイマイチすっきり飲み込めない部分があって、期待値は大きく下がっていた。しかし、随所に仕組まれた仕掛けと巧妙な舞台装置によって、徐々に引き込まれてゆく。その背後には、「ファーゴ」らしい中西部の世界観があることも、ドラマ作品としての一貫性を保っていた。

地方の街において、選挙で選ばれた保安官として君臨するのは、ジョン・ハムが演じるロイ・ティルマン。代々引き継がれた栄誉から自身を「神が選んだ」とまで公言し、自分がルールであるという言動を憚らない。その独善的な姿は、いかにもドナルド・トランプその人を表現しているかのようだ。

ジュノー・テンプル演じるドロシーが見せる不屈の根性とサバイバル技術にも驚かされる。彼女の境遇に陥れば、生き延びるためには欠かせないスキルなのだとは思うが、それにしてもあれだけの強さをしなやかに発揮する人物は、リスペクトするしかないだろう。

ティルの息子の保安官補ゲイターを演じるのは、「ストレンジャー・シングス」でスティーブ役のジョー・キーリー。そして、ティルの今の妻であるカレンも強さをしっかり表現していたが、演じたレベッカ・リディアードは「DEP:重大事故捜査班」で最初の航空機事故の生存者を演じた俳優だ。ふたりの演じ分けの妙も、十分に見応えがあった。