【映画】LAMB/ラム

「ラム」は、アイスランドの荒涼とした自然の中で繰り広げられるダークな物語。あまり予備知識を持たずに見たのだが、僕の想像力の斜め上を行く発想についていくのが大変だった。とにかく台詞が少なく、独特の世界観は役者の演技とカメラワークで表現される。ただ、演技という意味においては人間の役者のみならず、犬や猫、羊といった動物たちの表情や仕草が効果的に使われていることこそ、本作の最大の特徴といえるだろう。

羊の出産シーンが象徴的に使われているのだが、これを撮影するための準備は相当なものだっただろうし、テイクが繰り返されたのか一発撮りに賭けたのかなど、メイキングに関わる部分に興味をそそられてしまう。羊の生態はよく知らないので判断できないが、犬や猫はいかにもありそうな動きをしてくれるので、それだけで日常感が増す一方、ストーリーの非日常性が際立つ仕掛けになっている。この展開と脚本を思いついた制作陣のクリエイティビティには感服するしかない。

気になるのは、終わり方が唐突すぎること。もう少し余韻を残すのか、あるいはもっと前のシーンで衝撃を残したまま終わるかの方が収まりは良かったように思う。中途半端な余韻を残しながら思いを馳せるには、ちょっと重すぎるテーマだからだ。同じ発想で次回作を作ってしまうと大失敗しそうな気がするので、このプロダクションにはどんな視点を新たに見出すかに期待したい。