【ドラマ】高い城の男

タイトルが作品の世界観を表現していないこともあって、テーマがはっきりしないまま見進めた作品。第二次世界大戦をドイツと日本が勝利したというパラレルワールドで、北米はロッキー山脈を中立地帯として東をナチスドイツ、西を帝国日本が領有する中でストーリーが展開する。登場人物は複数の異なる結果となった時間を移動するが、今のトレンドワードで言えばまさにこれはマルチバースだろう。

ナチスを描く部分は比較的気軽に見られるのだが、日本の憲兵隊の様子や皇太子夫妻の設定など違和感が強すぎてリアルさを感じない。ナチスもそうなのかもしれないが、とにかくステロタイプな描き方に終始しているので、民族差別と言ってもよさそうなくらいひどい扱いになっていて、あまりよい気分はしない。日本人として登場するキャストも中国系らしき人を含め、日本人っぽくなく見える。木戸(城戸)警部を演じるジョエル・デ・ラ・フエンテはフィリピン系アメリカ人だが、表情や仕草などよく日本的なものを取り入れているとは思うのだが、それでもリアリティからはかけ離れてしまうのだ。

原作小説を読んだ妻の話では、駄作で面白くなかったとのこと。あの小説をここまで膨らませたのは、ある意味すごいとも言っていた。その意味では、製作陣にフィルターがかかっていた可能性は高いし、こういうところからアジア人蔑視にもつながるのだろうという気にさせられた。ちなみに原題は”The Man in the High Castle”なので、「高さがある城」ではなく「高いところにある城」という意味。より意味を近づけるなら「山城の男」なのだろうが、それでは地名や人名を想起してしまうので致し方ないところだろうか。