【Alice Waters】We Are What We Eat

邦訳版では「スローフード宣言」というタイトルがつけられていて、その通りスローフードの意義について書かれた書籍だ。ただ、読めば読むほど食に限った話ではなく、サステナビリティとか環境問題、そして地方再生にもつながる壮大なテーマなのだということがわかる。決して「スローフード宣言」と小さくまとめてしまってはいけないのだという思いを、僕は強くした。

安く手軽に食を提供しようと思えば、大量生産やオペレーションを重視した流通に依存せざるを得ない。しかし、それによって素材本来の味が失われたり、地域の特殊性が薄まってしまったりと、ネガティブなインパクトがどんどん積み重なってしまうのだ。企業は利潤の拡大を追求しがちだが、サステナビリティとかゴーイングコンサーンという視点に立てば、現状維持は決して悪いことではないはず。投資家を含むステークホルダーが本当に地球のことを考えるなら、一部の企業が急成長を続けることを喜ぶべきではないのではないか。何となく僕が以前から考えていたことを、著者のアリス・ウォータースは明確に説明してくれている。

そして、旬の素材を使うことにこだわったり、農家の取り組みに共感したりすることで、より深く食を楽しむことができるということも、僕の主義に合っている。毎日の食を特別なものにするのは、旬だったり生産者のこだわりだったりという日常的ではない要素を意識して作り、また選ぶことだと思っている。それによって、実際の味わいもよくなるだろうし、さらには知識として付加される調味料もパワーを持ってくるというものだ。この本はそういったことも、あらためて気づかせてくれる。