【ワールドカップ】オーストラリア―フランス

オーストラリアのゲームプランは、先制したことで崩れてしまった。これはよくあるパラドックスなのだが、「守ってドロー、あわよくばカウンターかセットプレーで1点取って逃げ切る」ことを目論んだ試合で先に点を取ることは、必ずしもそのチームにとって思い通りの結果をもたらさないということだ。

オーストラリアの基本は4-5-1のブロックで守ることだったはずで、日本のJ2でもありがちな戦術。その意味では、岡山のミッチェル・デュークを1トップに据えたことも納得がいく。しかし、9分にグッドウィンのゴールで先制したことで迷いが生じてしまい、その隙を突かれた2点目の失点は痛かった。フランスも、アルゼンチンの逆転負けという衝撃の事実を目の当たりにした直後ということもあってギアが一気に上がったのだろう。結果的にはリュカ・エルナンデスの負傷も、テオ・エルナンデスがうまく機能していたことを考えるとフランスに有利に働いたのかもしれない。

ベンゼマ不在でフランスの実力は疑問視されていた。FWに起用されたジルーは36歳。まだ彼に期待せざるを得ないのかという思いもあったが、2ゴールで結果を見せつけてしまうのはさすが。左サイドで圧倒的な存在感を示したエムバペも、大会を通して活躍してくれそうな予感が十分に漂っていた。センターバックの実力はまだ見極められてはいないが、大会前に言われていたほどの危機感は感じなかった。

それにしてもフランスのパスサッカーは圧巻だった。単に「誰にパスを出すか」だけではなく、その受け手が「どう動いて、どちらが利き足で次にどんなプレーを選択するか」まで見据えたパスを出しているのだ。受け手の動きもバタバタすることなく、「どう動いてどう裏を取るか(あるいはフリーになるか)」が予測しやすいモーションになっている。お互いの意思疎通もしやすいし、無駄な動きで体力を消耗することもない。これは基本的なことではあるが、チームとして徹底できていることは賞賛に値するだろう。