【Citiオープン】西岡良仁―ルブレフ

ワシントンDCで快進撃を続ける西岡良仁が、ついに決勝にまで到達した。それは紛れもなく、戦術の勝利だった。雨でスケジュールが大幅に乱れている今大会では、どの選手も普段以上に心身ともに疲労が溜まっているはず。この試合は序盤からルブレフにミスが目立ち、これなら勝てるかもしれないという期待が西岡自身にも応援するファンにも芽生えたはずだ。そして西岡は、果敢に真向勝負を挑み、鋭いダウン・ザ・ラインなどウィナーを狙うショットでポイントを重ねることで、DCのスタンドをどんどん引き込んでいった。

そして1セットアップとなり、セカンドセットはブレーク合戦の様相を呈してくる。お互いミスが多くなり、ダブルフォルトで流れを手放す場面もあったが、西岡は明らかに戦術を変えてきた。ウィナーを狙うのではなく、長いラリーに持ち込んで相手のミスを待つ。そのために球種や回転、軌道を巧みに散らしていた。ムーンボールは効果的で、思わず判断ミスしたルブレフがライン際で急激に落ちる軌道を手でなぞる仕草をしていたほどだ。

この戦術変更で、エキサイティングな展開ではなくなったが、それは西岡の思うツボ。チャンスとばかり力んではミスを繰り返すルブレフに対して、したたかに戦術を貫いた西岡が勝利をつかんだ。決勝の相手は、いまだ勝ったことのないキリオス。パワーで押してくるだろうが、ミスも多いはず。調子に乗せると手はつけられなくなるだけに、ミスを誘ってモチベーションを削ぐことは有効だ。