BBC製作の少し古いドラマだが、いかにも英国らしい作りとキャスティングで飽きることはない。ソ連KGBとの諜報合戦をテーマに、70年代のMI5を舞台として展開するストーリー。主演のトム・ヒューズはどうも好きになれないが、ボス役のブライアン・コックスの腹黒さが滲み出る演技や防諜部長ボビーを演じるポール・リッターのマザコンぶりは、さすがに英国の伝統を感じさせてくれる。登場人物が多く、しっかりとキャラづけされている割には出番が少なかったような気もするが、シーズンを重ねるプランもあったのだろう。そうでなければユリアの使い方は不自然というか、余計なものにも見える。
そんな中、キャストでちょっとした驚きを与えてくれたのが、秘書だったはずが現場で諜報活動までこなしてしまうウェンディを演じたクロエ・ピリー。先日見た「HANNA」ではぴったりしたボディスーツを身にまとったCIA秘密組織の幹部ステープルトンを演じていて、アクションまでこなしていたのだが、ウェンディとして冴えない秘書を演じる部分とのギャップが驚異的なのだ。撮影時期は4年程度の開きがあると思うが、その間の役者としての成長が見事だということだろう。
変な意味で印象に残ったのが、そのウェンディにセクハラ行為をするボビー。好意を抱くウェンディの部屋を訪れて、「ここに手を置いてみるよ」と膝に手を乗せてみたり、その膝をもんでみたりと、いかにもセクハラ上司がやりそうな行為を見せる。こういう人種の存在は日本だけではないのだと、妙に納得させられる演出だった。