【ドラマ】ダブリン 悪意の森

2人の刑事をそれぞれ主人公にした同じ作家による2つの短編が、同時進行で展開する造りの本作は複雑なストーリーと登場人物でなかなか理解が追い付かない。全8話の中盤まで一気に見進めて、どうオチがつくのかまったくわからない状況だった。結末は予想外で満足感のあるものだったが、張り巡らされた伏線のうち回収されないものが多くあって消化不良な一面もあった。

俳優陣の演技は素晴らしい。アイルランドを舞台にした英国作品だが、著名ではない役者たちの表情や仕草が実にキャラクターに合わせ込まれていて、それだけでお腹一杯になってしまうほどだ。特に最後に犯人であることが判明する人物や主人公である2人の刑事ロブとキャシーの演技は、細かいところまで意図が感じられる。さすがに演劇王国の制作だ。

アイルランド渡航経験があるのだが、僕が訪れたダブリンやゴールウェイ、マラハイドのような都市や観光地とは一味違った風景や文化が本作では垣間見える。英国に対する劣等感、離婚や堕胎を認めないカトリックの文化あたりを頭に入れておいた方が、このドラマのメッセージを深く受け取ることができるだろう。