【小説】海が見える家 それから

はらだみずきの前作「海が見える家」を読了した直後に、たまたま書店で見かけて迷わず購入してしまった続編「海が見える家 それから」。前作で欠けていたキャラの立て方には、かなり注力した印象があり、登場人物のバックグラウンドがしつこいくらいに描かれていた。ただ、残念なのは説明的な描写が多く、特に終盤30ページほどはあまりに拙速にストーリーが展開してしまったことだ。

ストーリーのメインストリームから外れて「あの人は、どうなったのだろう」と感じていた人物が登場してヤマが訪れるのだが、もっと丹念に書けばあと2冊くらいの分量になりそうなエピソードが、あっという間にオチがつけられてしまう。これでは、先の展開にワクワクドキドキすることもできない。まるで打ち切りが決まったドラマを無理やり終わらせようとしといるかのような感触があった。

そんな中、最後のヤマに持ってきたのが、今まで主人公の生き方を否定し続けてきた元カノ。あまりの変わり身に、「この子はやめておけ」と主人公に忠告したくなってしまった。この後もシリーズが続くのだとしたら、ちょっと期待度を下げざるを得ないように思う。それくらいなら、これまでに出てきた魅力的な脇役たちのスピンオフを書いてくれた方が、僕としては納得できそうだ。