【USオープン】大坂なおみ―アザレンカ

ファーストセットのビカことアザレンカは、完璧だった。エネルギーに満ち溢れ、ラリー戦では先に攻めに転じる。大坂はファーストサーブがなかなか入らずに苦労していたので、完全に後手に回ってしまい、アザレンカの仕掛けをなんとかリターンしているうちにアンフォーストエラーを犯すという繰り返しだった。あっさりセットダウンとなり、このままではあっという間に決勝が終わってしまうという雰囲気だった。

しかし、大坂は挫けない。セカンドセットもブレークを先行されながら、すぐにブレークバック。このあたりで少しビカの表情からエネルギーが失せ、ミスも多くなってきた。面白いもので、最初は大坂のコートに落ちていたコードボールもビカのコートに落ちるようになる。セットオールでファイナルセットに突入し、大坂はブレークバックされた直後の第8ゲームで再び突き放す。USオープンの女子決勝でセットダウンから逆転したのは25年前のアランチャ・サンチェス・ビカリオ以来とのことだが、今大会も含め大坂がスロースターターであることは周知の事実。長い試合になれば底力を発揮するのが大坂なおみなのだ。

優勝を決めるとコートに横たわり、フィセッテコーチや茂木さん、中村さんとハグを交わす。準決勝では居心地が悪そうだったボーイフレンドTBNコーデーも、この日は表情に余裕が感じられた。Black Lives Matterの活動がセレモニーのインタビューでも取り上げられたが、まさにチャンピオンにふさわしい矜持だったのではないか。日本文化からは異質だとしても、彼女が日本人として活躍することは誇らしい。