【ドラマ】黒い森 殺人事件

フランス国境に近いドイツの「黒い森」で起きた連続殺人事件を追う物語は、フランスとベルギーの共同製作。フランス側はストラスブール、ドイツ側はカールスルーエを中心に展開する。吹替版で見たので、実際にどの言語が話されていたか不明ではあるが、両国の警察が牽制し合いながらの駆け引きからは、いかにもヨーロッパという印象を受ける。

英国とフランス、デンマークスウェーデンといった関係は定番だが、ドイツとフランスと言えばナチスドイツのフランス侵攻や「最後の授業」のアルザス・ロレーヌ地方のことが頭に浮かぶ。それらの背景を踏まえて、自分なりに肉付けしながら見ることができた。ただ、地元の人にとってはもっと深いところまで理解できるはずなので、製作側の意図が日本人の自分にどこまで伝わったかは何とも言えないところだろう。

「バティスト アムステルダムに潜む闇」のチェッキー・カリョがドイツの刑事を演じているが、クセの強さがハマっている。彼はトルコ出身なので、トルコ移民の増加に悩むドイツの刑事という設定にも意味がありそうだ。

不思議なのは、タイトルの「黒い森」と「殺人事件」の間にスペースが空いていること。原題は"Les Disparus de la Forêt-Noire"なので、特に分ける必要はないように思えるのだが…

【ストリートアート】バリー・マッギー

渋谷と恵比寿の間にある「庚申道ガード」に、ストリート系アーティストであるバリー・マッギーが作品を描きました。災害時の避難経路をアートで表示する「渋谷アロー・プロジェクト」の一環のようなのですが、この作品を見る限り矢印など避難の方向が示されているようには思えませんね。

とはいえ、著名なアーティストがこんなローカルな場所に大作を残してくれたことには感謝しかありません。終わってはしまったけれど、伊勢丹新宿店でもバリー・マッギーらしさを引き出す展示が見られたので、僕の中での彼の存在感はまた大きくなりました。

【フィギュアスケート】STARS ON ICE 2024

世界選手権が終わってオフに入ったフィギュア界は、しばらくアイスショーのシーズンが続く。この時期の日本は桜の花を楽しめるということもあって、期待して訪れる海外の選手も多いことだろう。インスタのストーリーズなどでは、選手たちの楽しそうな観光の様子を見かけることも多い。

りくりゅうが欠場したものの、日本からは宇野昌磨と坂本花織を筆頭に若手も顔を揃え、イリヤ・マリニン、イザボー・レヴィト、ルーナ・ヘンドリックスも来日。僕の一番の期待はマディソン・チョックとイヴァン・ベイツだったが、その期待に応えて白い布を使ったアーティスティックな演技を披露してくれた。

一方で、気になったのがゲスト出演したキーガン・メッシング。相変わらず表情豊かに、バックフリップを決めるなどアリーナを湧かせたのだが、ジャンプは2回とも跳び損ねてしまい、彼の持ち味である爆走感もあまり感じられなかった。すでに引退しているとはいえ、競技生活の延長としてショーに出演する以上は、やはり競技で使う技にはこだわりたいはず。ジャンプを失敗したキーガンの表情からも、不完全燃焼というような様子が窺えた。僕としては、まだキーガンの演技をショーで楽しみたい思いもあるのだが、この状況では来シーズンは難しいかもしれない。

大会でのSPを使用した選手も多かったようで、エキシビションのようなエンタメ色の強いプログラムが少なかったことは残念。そんな中で三浦佳央を従えてドライバーに扮した「Jazz Machine」で盛り上げた友野一希はさすがだった。整氷前の坂本との掛け合いでは、普段あまり感じない関西弁イントネーションがはっきり出ていて、素に近い表情を見せてくれた。

今回はスカパーのTBSチャンネルでの視聴だったが、ショーに実況と解説は不要ではないだろうか。相変わらず八木沼純子さんがジャンプの種類をコールしたりしていたが、プログラムが始まったら基本的には黙って欲しい。「友野の相方は三浦」というような有用な情報は、ぜひ伝えて欲しいとは思うのだが…

【大分―秋田】攻め切れない弱み

岡山戦に続いて、相手に退場者を出しながら攻め切れない弱みを露呈してしまったことは、敗戦以上に大きい損失ではなかったか。それにしても大分トリニータは、いろいろと残念な結果を残してしまったものだ。

守備に関しては、さほど悲観するようなものではない。最初の失点は秋田の攻撃がプラン通りのものだったところに不運も重なってしまったし、2点目のPKは意味不明。3点目は攻めに出てのカウンターなので、致し方ないだろう。

秋田がゲームプラン通りに点を取ったことに比べ、大分はゲームプランがないに等しかった。今の戦力ではやむを得ない部分も大きいので、誰かを責めても意味がないとは思う。これまで疑問だったのは、なぜ長沢をトップに張らせずに低い位置で受けさせるのかということだったが、今日のゲームを見ればその答えがわかる。インサイドで縦にパスを通そうとしても、長沢しかボールを収められる選手がいないのだ。

縦パスを試みても受け手のスキルが足りないので、出し手が躊躇するようになってゆく。それが端的に出ていたのが小酒井だ。若手の起用は推奨したいところだが、小酒井のように怖がっていてはどうしようもない。前節良い面を見せた有働も、プレースキックはまったくダメで、中の選手が揃って「キッカーを変えろ」という手振りをしていたところを見れば、可能性のなさがわかる。なぜ彼をキッカーに指名していたのか、そして、どんなプレーを期待して最初から起用したのか。ゲームを見る限り、これが最大の謎だ。

そして、もうひとつ。今日の主審を務めた大橋侑祐は、問題外だった。今季からJ2担当に「昇格」したようだが、ファウルもアウトオブバウンズもまったく見れていない。笛の基準もあいまいな上にポジショニングも悪く、自分がボールに当たってしまった際の処理も納得しかねるもの。スキルのない審判が無理に作る笑顔は、見る者を不快にさせるだけだ。彼に限らず最近の審判のレベルには大きな問題があるので、JFAは真剣に審判育成を考える必要がある。

【ドラマ】ピーキー・ブラインダーズ

今年のアカデミー賞において「オッペンハイマー」で主演男優賞を受賞し、配慮のある紳士的なスピーチが印象的だったキリアン・マーフィーの主演ということで興味を持ったドラマ作品。英国の裏世界を、ジプシーの一族であるシェルビー家の視点で追うストーリー。全6シーズン×6話というコンパクトな構成だが、1話が60分あるので内容は盛りだくさんだ。

「ジプシー」という語は差別的な位置づけにあるが、英国では「ロマ」ではなく「ロマニー」と「アイリッシュトラベラー」が併存しているようなので、用語ひとつとっても選択は難しいのだろう。独自の言葉を使い、移動手段や住居、風習、髪型なども特徴的に描かれているだけに、世界観に没入できる作品に仕上がっている。

登場人物が多い上に、ユダヤ人、イタリア人、ファシストなど多彩な集団と合従連衡を繰り広げるので、十分に理解して見進めるのは容易ではない。それでも俳優陣の演技と演出が圧倒的で、表情だけでも充実感が満点なので、見応えは十分だ。主人公トミーを演じるキリアン・マーフィーの演技も素晴らしいが、その兄アーサー役のポール・アンダーソンやマイケル役のフィン・コールもこだわり抜いた演技を見せてくれる。

そんな中、トミーの伯母ポリーを演じたヘレン・マックローリーがシーズン5終了後というタイミングで亡くなってしまったので、おそらくシーズン6は大幅な手直しが入ったのではないか。シェルビー家の中にあって、女性ながら重鎮の位置づけを担っており、息子マイケルを絡めたトミーとの隠れた対立など、役回りも重要だっただけでなく、存在感も大きかった。彼女を失って、シーズン6はやや迷走した感が否めない。

そして、本作を特長づけるのは音楽の使い方。銃撃戦の場面の音をカットしてBGMだけを聞かせてみたり、効果的にロックの楽曲を織り交ぜてみたりとこだわりを感じさせてくれる。日本ドラマのように、タイアップで予算を浮かせる手法とは対極にある。

裏世界を牛耳るピーキー・ブラインダーズだが、彼らの主張は時に合理的にも聞こえる。正義だけでは生きてゆけないし、どんな正義でもひとつの価値観でしかないのだ。誤解を恐れずに言えば「誰を守るか」の違いであるという意味では、現代の中絶問題に通じるともいえる。自分の生命や家族の安全のために自らの価値観に背くことは、決して責められるものではないのではないだろうか。そんなことを、あらためて考えさせてくれる作品だった。

【桜便り】千鳥ヶ淵のソメイヨシノ 2024

遅れていたソメイヨシノが開花したところで、今度は天気が不安定になってしまい、なかなか良好なシャッターチャンスが見当たらないながらも、小雨交じりの千鳥ヶ淵で桜を楽しんできました。

この時期はカメラを手にした人が押し寄せるので、早朝がベスト。通勤途中の朝8時前に地下鉄を市ヶ谷で降り、半蔵門までをウォーキングしながらのソロ花見でした。渋谷の桜は欧米やアジアからの観光客が撮影していることが多いけれど、千鳥ヶ淵は年齢層の高い日本人が大半でした。

千鳥ヶ淵での撮影は、桜をアップで撮るよりも、お濠の水面に映る遠景の方が美しいと思っています。天気が良ければ青空とのコントラストが美しいのですが、今年はそれも難しそうですね。

東京のソメイヨシノは、すでに葉も目立ち始めているので、この週末が花見のラストチャンスになりそうです。

【HISオンラインツアー】イタリア・ヴィンチ村

レオナルド・ダ・ヴィンチの出身地を巡るHISのオンラインツアーは、45分のコンパクトな旅。「ヴィンチ村のレオナルド」という意味の名前で呼ばれている天才の美術館周辺を巡るだけで、展示物は写真での紹介しかないが、訪れる機会が期待しにくいイタリアの田舎の風景を見るだけでも、それなりに満足感があった。

ここがメディチ家というスポンサーの拠点であるフィレンツェに近かったことも、レオナルドの才能を開花させる上では必要な要素だったはず。遠くに望むトスカーナの山並みやレオナルドが洗礼を受けたとされる教会の佇まいに、彼が生み出した作品を思い出すとともに、歴史の流れを感じることができた。

最新の研究によれば、レオナルドの母親はコーカサス出身の奴隷だったという新設が浮上しているとのこと。父親が公証人だったことは知られているが、母親のことは謎に包まれている。残念ながらこのことを扱った書籍の日本語版は未発売で、英語版もAmazonでは探し切れなかったが、現在のジョージア付近から黒海と地中海を渡ってフィレンツェに連れてこられた女性が天才を出産する運命を思い浮かべるだけでも、壮大なロマンを感じてしまう。

この時期のヴィンチ村は観光客の姿もさほど多くなく、寂れた地方の観光地という雰囲気だった。ここではないにしても、こんな街を訪れてゆっくり流れる時間を感じるのも悪くなさそうだ。