【湊かなえ】狙って外した「境遇」

「告白」でのデビュー以来、立て続けに作品を出版している湊かなえ。彼女の新刊「境遇」を読了しました。本作はテレビドラマ化を前提としている上に、作中に登場する童話とのセット販売など、ビジネス優先を窺わせることから嫌な予感はしていたのです。

その予感の通り、彼女の本来の持ち味である「登場人物が自然に醸し出す毒」も「現実感あふれるリアルな設定や会話」もなく、ドラマのために設えたのであろう県会議員だの養護施設だのという「アウェイなネタ」を描くのに汲々としているように見えました。今回はあえて「複数プロットが収束してどんでん返し」というワンパターンから脱することを狙ったのでしょうが、結果として外してしまったということだと思います。

立て続けの新刊の書き下ろしで出版界に食い物にされている感のあった湊かなえですが、テレビに引導を渡されてしまうのでしょうか? 今のマスコミには才能を「育成」する余裕はないのかと暗鬱とした気分にさせられてしまいました。ワンパターンと言われようが、彼女には自分のスタイルを貫いてもらいたい。ドラマの脚本を書ける作家はたくさんいても、湊かなえは一人しかいないのですから。