【湊かなえ】豆の上で眠る

以前は出版されるたびに読んでいたのですが、ちょっと飽きてしまった湊かなえ。新刊「豆の上で眠る」が出たので、久しぶりに彼女の作品を読んでみました。本作には「行方不明になった姉。真偽の境界線から、逃れられない妹――。あなたの<価値観>を激しく揺さぶる、究極の謎(ミステリー)」というコピーがつけられています。

張り巡らせた伏線と主観のずれが織り成すスピード感ある展開が湊の持ち味なのに、すっかり色褪せてしまった印象があります。序盤から説明的な文章が続き、中盤では余分なエピソードで字数を稼いでしまってスピード感がなくなり、そしてオチも読めてしまうものなのです。初期の作品で多用していた「複数の登場人物それぞれの視点のズレでつなぐ」展開はさすがにもう使えないでしょうが、それにしてもストーリーテラーとしての魅力はどこへ行ってしまったのでしょう。

正直、短い期間に作品を書き過ぎていたように思いますが、それはつまり出版社のビジネス上の理由。そう考えると、湊かなえという才能は出版社につぶされたと言っても過言ではないと思います。

https://www.shinchosha.co.jp/book/332912/