【湊かなえ】「往復書簡」の限界

「告白」の著者・湊かなえの新刊「往復書簡」は、短編集でした。手紙のやり取りという同じテーマを用いながら、まったく異なるアプローチで書かれた三篇の話から成ります。これまでの「ひとつの物事でも、見る人によってさまざまな真実がある」という一貫した主題を受け継ぎながら、手紙という制約の中でどのような「意外性」を打ち出してくれるのか興味がありました。

しかし、やはり「手紙」の制約は大きかった。まず第一に文語体にするがあまり、会話にリアリティがなくなってしまうので、テンポやリズムが悪くなります。そして、無理に話を展開したためか、設定自体が怪しいものになってしまいました。特に最後の「十五年後の補習」では、手紙でのやり取りのはずなのに、終わりのクライマックスの部分で「誰がいつこれを書いたとしても、おかしいだろう」という結末になっていて、「策に溺れた」感が否めないのです。

驚くほどのペースで作品を書き続けている湊かなえは、このままいくと「旬」の時期に使い尽くそうとする出版社につぶされてしまうでしょう。このあたりで充電期間を取ることが、彼女の作品を心待ちにしている読者への最高の贈り物なのだと思います。

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