「告白」の著者でもある湊かなえの、新刊「サファイア」を読了しました。作品としては十分に面白いのですが、連作短編という形を取った編集スタンスに大いに違和感を覚えます。序盤は、「短編としておもしろい作品」と「今後に向けて何かの実験をしようとした習作」が混じっており、最後の2編は確かに連作と言えるでしょう。
しかし、それぞれの短編に無理やり宝石のタイトルをつけ、連作としてまとめてしまうには無理があります。テイストもまったく異なり、小説としてのスタイルにも一貫性がないものは、連作とは呼べません。こんな安易な売り方をせず、作者の頭の中でもっとじっくり熟成させたら、きっと良い長編に仕上がっていたはず。そう考えると、あまりにももったいないのです。
「サファイア」と「ガーネット」は、湊かなえらしい毒を持ったシニカルな世界が描かれています。その人にとっての「真実」は、必ずしも他人にとってのそれではない。彼女が以前から繰り返し描いている世界観を踏襲した主題には安心させられますが、それが全体を貫いてないところが残念としか言いようがありません。
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