【東京国立博物館】空海と密教美術展

日曜日朝一番の東京国立博物館は、さすがに大混雑でした。それでもチケット購入と入場で並ばなかったので、まだよかったのかもしれません。「空海密教美術展」はさすがに博物館だけあって、歴史を学ぶよう見せ方になっています。摩耗の激しい曼荼羅図などは、美術品としてよりは博物的価値が高いということなのでしょうね。

この展覧会の最大の見どころは、第二会場の最後のエリアに繰り広げられる「仏像曼荼羅」です。キャッチコピーである「この夏、マンダラのパワーを浴びる」は、まさしくこの展覧会のハイライトを言い尽くしていると言えます。東寺講堂に安置されている大日如来など国宝8体によって再現された曼荼羅は、規則性をもって群像が配置され、まさに「立体曼荼羅」です。

この仏像群を見ることで、思い知らされたことがあります。それは、「平安を得て悟りを開くためには、力と戦いが必要なのだ」ということ。周辺に配置された明王や四天王は、怒気をあらわにした表情で邪鬼を踏みにじったりしており、まさに戦いを示唆しています。中央で悟りを開く仏を包む平安は、そのような戦いあってのもの。自分たちの価値観を守り、異なる価値観を駆逐する。それが宗教の本質なのだとすれば、戦争はなくならないのだと実感しました。

アート的な視点でも、これら仏像群は十分に堪能できます。激しい表情を刻む一方で、衣の柔らかなファブリック感を表現する曲線も見事です。細部までしっかりと作りこまれた国宝の美を、東京で味わえる機会は貴重だと思います。

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