【ワールドトレードセンター】主役は宗教

この作品、ニコラス・ケイジが被害者を救出するヒーローなのかと思って見ていたら、まったく違う展開だったのでやや混乱してしまいました。彼は作品のほとんどの時間を、動きが取れずに救出を待つ形で演技しますが、それが渋い存在感を際立たせていました。

最初の部分でよく知られた9.11の事件が一般市民の視点で描かれ、航空機が突っ込んだビルから書類が舞っている様子などが妙にリアルで、思わず背筋が寒くなるような怖さを感じてしまいました。決して派手なアクションがあるわけではなく、展開は地味です。そしてそんなストーリーのバックグラウンドにはキリスト教の博愛と異教徒への敵対が滲み出ています。欧米人がボランティアに参加するとき、そこにはキリスト教に特徴的な博愛とか奉仕、施しということがあるはず。それはまた、事件を引き起こしたとされる異教徒に対する敵対心にもつながっていきます。

ただ、全般的にそれほど堅苦しい作りにはなっていないので、わかりにくいことはないでしょう。単なる娯楽作品としてより、あの事件を読み解くひとつの手法として見ると興味深いのではないでしょうか。そしてその背後にある「アメリカ」という国家を、より深く知るきっかけにもなると思います。

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