【イタリア-フランス】今大会が凝縮

PK戦で決着をつけたこのゲームは、今大会の特徴を良くも悪くも凝縮したものとなった。フランスの先制点はジダンのPKで、イタリアの同点弾はセットプレーから。流れの中ではなかなか点を与えない守備ができるチーム同士が勝ち上がった結果ではあるが、攻めあぐねているだけではなく、時に鋭いカウンターが炸裂する。

その攻めを見せたのはフランスだった。しかし、明らかに攻めの駒が足りない。ヴィエラマケレレが攻め上がりを自重し、ジダンも疲れからか前線での仕事がなかなかできない。アンリがボールを持って突破しても、リベリーマルーダだけのサポートでは怖さを感じない。じりじりした展開にフランスはイラついていたことだろう。そしてヴィエラの負傷とジダンの退場。アンリも下げたということは120分で勝ちに行ったということで、PK戦に持ち込まれた時点でフランスは負けだったのだ。

それにしてもEURO2000でイタリアからゴールデンゴールを奪ったトレゼゲがPK失敗するあたりも、出来すぎたシナリオのように思う。

今大会は「誰の」大会だったのか。戦前に言われたような、ロナウジーニョではなかった。前半戦で目立ったメッシとベッカムも、チームの限界の中で消えた。後半戦を盛り上げたのは、引退に向かう「老兵」ジダンと、爆発しないイタリア攻撃陣にあって2得点を上げたマテラッツィではなかったか。そうするとこのふたりのマッチアップでジダンが退場したのは、まさに今大会が凝縮した象徴だったといえる。スター不在の世代交代大会となったドイツ以後、世界のサッカー勢力図は大きく変わるのかもしれない。