【映画】シン・ウルトラマン

オリジナルのウルトラマンは「空想特撮シリーズ」という位置づけだったが、本作は人間社会の対立と戦争の合理性を巡る社会的な作品だ。原作に対するオマージュもある一方で、設定に大幅な改変も加えられているが、それはすべて「原作を自らの文脈で再構成した」ということなのだろう。序盤を見る限り、ももクロやジャニーズ、女性タレントを前面に押し出した低俗な作りにも見えたのだが、西島秀俊山本耕史の演技に集約されるように完璧なキャスティングだという印象に変わってゆく。

山本の演技も素晴らしいが、メフィラスの設定はオリジナルの「メフィラス星人」を生かしつつも独特の世界観を再構成している。ザラブは、ニセウルトラマンや巨大化した浅見を見せるためには不可欠な要素だった。オリジナルでの宇宙人と言えばバルタン星人だが、「難民」であることは本作の文脈では広がり過ぎて扱いづらかったのだろう。ウルトラマンが神永と融合する過程やゾーフィとの最後の会話、そして最終的に人類の力で外敵を倒す設定はオリジナルを踏襲しているし、オリジナルを見ているからこそ理解がしやすかったのかもしれない。

全体的な印象としてはハリウッド的なものを感じたし、日本の映画演劇によくある「独自の流儀を押し付ける」要素が少なかったことを大いに評価したい。ただ、日本人の日常を描くシーンで狭いそば屋が描かれたり、メフィラスと神永が居酒屋で会食したりという部分では「やはり日本人の生活といえば、こうなってしまうのか」という微妙な絶望感を覚えたことも事実。自分の日常とはあまりにかけ離れた描写ではあるが、「それが日本人だ」と言われれば否定もできない。製作陣の意図として、果たして本当にこれでよかったのだろうか。