UEFAチャンピオンズリーグの決勝は、いきなりの乱入者によってその場を汚されてしまった。配信目的のYouTuberかと思いきや、ロシアのインフルエンサーが提示した懸賞金目当てのようで世相を表しているといえばそれまでだが、選手へのリスペクトも何もあったものではない。
試合は完全にドルトムントのペースで展開する。攻守の切り替えが早いため、どの局面でも人が余っており、マドリーはひとり少ないのではないかと錯覚しそうになる。マドリーはパスの出しどころがなく、その先の展開を予測せずにとりあえずパスを出している状況に陥っていた。そんな中でも、唯一チャンスを作り出していたのは、左サイドのヴィニシウス・ジュニオール。彼だけが得点の香りを漂わせて、守備ではクルトワがドルトムントの危険なカウンターを何とか封じ込めていた。
しかし、いかにドルトムントといえど、あのサッカーを90分続けるのは困難だ。後半は徐々にプレーが切れる時間が多くなり、スペースもパスコースも生まれ始める。そして74分にヴィニシウスの巧みなボールコントロールで得たCKからカルバハルがヘッドを叩き込む。EUROを最後に引退するクロースが、自国のクラブに引導を渡すアシストを決めた形となった。
そしてドルトムントがDFラインで出した甘い横パスを拾ったベリンガムからヴィニシウスに渡り、決定的な2点目を決める。今日のマドリーにおいて攻撃の要だった彼がゴールを決めたことは、象徴的な出来事だった。
最後はそのヴィニシウスへのスタンディング・オベーションを要求するかのような交代があったが、ここで投入されたのがルーカス・バスケスという贅沢さ。クロースを下げた際にはモドリッチを投入するなど、マドリーとしてはストーリーとしても完璧な終わり方だった。
個人的にはマドリーを応援していたのだが、前半を見る限りドルトムントの方が魅力的なサッカーをしていた。普段はJ2を中心に見ているので、久しぶりにスピードとテクニックに裏打ちされたチームプレーを堪能させてくれたドルトムントにも感謝したい。