デンマークのドラマシリーズ最新作「ロスト:ゾウズ・フー・キル」。心理学者ルイーセを演じるナタリー・マドゥエニョはデンマークでは人気女優のようだが、今回も彼女の演技を引き出すためと言ってよさそうな展開になっていた。
コンサルタントとして警察を手伝うという設定は前回同様だが、刑事を差し置いて潜入捜査を敢行して殺害されかけるという場面もあり、彼女にしてはアクション要素も強めだ。トラウマを抱えてるために、帰宅した際に部屋の中をすべてチェックしないと気が済まないということを考えると、潜入捜査に参加させるのは無理がありそう。ただ、一方で彼女の魅力を最大限引き出すには、このような心の揺れも表現する必要があったのかもしれない。
全8話の構成だが、前半と後半では3年の年月が経過している。前半で起きた事件が未解決のまま残り、後半に起きる別の事件がリンクしてゆくということなのだが、このふたつのプロットのつなぎ方は絶妙だ。そして、前半は本作シリーズにしては異質な感覚があったのだが、後半になると出来事はかなり尖っているものの、演出と展開はシリーズ本来の魅力が引き出されてテンポもよくなって行った。
デンマークにドラマをかなり見てきた上に、仕事上デンマークに友人もいるので、何となくデンマーク人の全体像が見えてきたような感覚がある。静かに地味に生活する一方で気性は激しく、そんな中でも女性が社会の中で活躍している。それらはドラマに描かれるステレオタイプではなく、おそらくデンマーク人の本質なのだろう。