【ビリージーンキングカップ】日本―カザフスタン

杉山キャプテン率いる日本チームは、カザフスタン有明コロシアムで対戦。カザフスタンはリバキナが来ておらず、一方の日本は大坂なおみが4年ぶりに参戦ということで、試合前から日本の優位は明らかに見えた。

Rubber-1は日比野菜緒とダニリナ。ダニリナはダブルスプレイヤーで、WTAのシングルスランキングは939位。ただ、男女ともに国別対抗戦においては、資金や家族などの諸事情でふだんツアーを回れない選手が「隠し玉」のように起用されることがあるので、油断はできない。

始まってみれば、日比野が一方的に仕掛け、押す展開に。実力差のせいか、いつもよりのびのびと自分のテニスができており、コースの打ち分けや回転もいろいろと試す感じで、それがうまく回っていた。実のところ僕はこの日、会議が終わったら有明に向かおうかと考えていたのだが、試合の進行が速く、会議も長引いたので、早々に断念して帰宅後のWOWOWオンデマンド観戦に切り替えたのだった。それくらいに、一方的な試合だった。

続くRubber-2は大坂なおみがプティンセバと対戦。これまでのH2Hは大坂の1勝3敗と、分の悪い相手だ。大坂はファーストサーブの確率が決して高いわけではないながら、エースを次々と決める。パワフルなテニスの印象ではあったが、プレースメントも絶妙で、ワイドぎりぎりを狙ったショットや相手を押し込む深いショットが効果的だった。悪い時のなおみちゃんは、ネットに掛けてしまうことが増えるのだが、この日はほとんどそれが見られなかった。

僕が何よりもうれしかったのは、試合後のオンコートインタビューで大坂が自然な笑顔になっていたこと。そして杉山さんがそれをうまく引き出しているように感じられたことだ。日本語が苦手なこともあって選手間のコミュニケーションにも苦労しがちな彼女を温かくサポートし、試合中も余計な指示をするのではなく最低限のメンタルコントロールに徹していたように見えた。大坂にとっては、この上ない環境だったはずだ。

初日を終えて日本が2勝。土曜日は3列目という良い席での生観戦なのだが、日比野がプティンセバに勝ってしまうと日本の勝ち抜けが決まり、なおみちゃんの試合がなくなってしまうことが最大の懸念だった。

そして土曜日のRubber-3は、日比野とプティンセバの対決。この試合はとにかく激しい闘志がぶつかり合い、テニスの内容も非常に高いものだった。日比野が勝てば大坂の試合がなくなり、負けて大坂が勝てばアオシバのダブルスが見られなくなる。そんな複雑な気持ちが当初はあったが、そんなことはどうでもよくなり、とにかくここまでがんばっている日比野に勝たせてあげたいという気持ちが強まった。

ラリーでも、お互いすべてのショットに遊びがなく、常に攻め続ける。プティンセバがしつこく日比野のフォアサイドを攻めれば、日比野は狭いサイドにダウン・ザ・ライン。普段は礼儀正しい振る舞いと、ポイントを落としたときに両足を揃えてちょこんと跳ぶ仕草が記憶に残る日比野だが、この日は叫ぶ、吠える。「おらぁ」とも「うりゃあ」とも表せそうな声を発して、一歩も譲らなかった。

ファイナルセットの第3ゲームを競り合いながらブレークしたプティンセバがメンタル面でも優位に立ったように見えたが、次のゲームで、これまで決まっていたドロップショットを日比野が拾って流れが変わる。タイブレークではマッチポイント4本を凌いだ日比野が一気にひっくり返して勝利をつかんだ。

大坂の試合は見られなかったが、開始前にコートで練習する彼女をコートエンドの3列目で見られたので、まあよしとしよう。

デッドラバーとして行われたダブルスは、競った展開で見応えはあったが、アオシバは細かいミスが多くマッチタイブレークで終盤に追いつきながら振り切られてしまった。青山はセカンドサービスのレットが目立ったが、時折見せる鋭いサーブには、まだまだ成長を続けている様子も窺えた。

最後のオンコートインタビューでは、選手5人と杉山キャプテンが仲間と観客に感謝を伝えた。その様子を見ているだけでも、杉山愛さんが選手のモチベーションを引き出し、チームに一体感をもたらしたことがよくわかる。組織を活性化させるポイントがここにあることを、あらためて認識させてもらった。やはり、よいチームは仲が良く、同じビジョンを描いているのだ。