【東レPPO】マルティッチ―土居美咲

今大会を最後に引退を表明している土居美咲。予選からの出場だったが、欠場選手の影響で予選決勝の対戦相手だったクルーガーが繰り上がって予選不参加となったことで、不戦勝扱いで本戦に駒を進めていた。有明コロシアムは、平日ということもあってスタンドはまばらではあったが、熱い声援と拍手が土居を後押しする。

試合開始から全開の土居は、最初の3ゲームを取って先行。腰を気にする素振りが見え始め、伸ばしたり座り込んだりという場面が増える中、追いつかれたときには「もう厳しいだろうな」という印象があった。しかし、第12ゲームをブレークしてセットアップとすると、セカンドセットも相手にリードを許さず勝ち切った。画像は、勝利を決めた直後の土居のガッツポーズだ。

やや流れが悪くなったファーストセット中盤にスタンドから「レッツゴー美咲、レッツゴー!」という声に合わせて手拍子が起こり、続くサービスゲームをラブゲームでキープしたあたりが大きかったように思う。これで自信と希望を取り戻したのだろう。土居は終始攻めるテニスを貫き、痛い腰を物ともしない体のキレでダウン・ザ・ラインを決め、深いプレースメントでマルティッチを惑わせた。

同い年の選手の最後の大会ということで、マルティッチもやりにくさはあっただろう。ダブルフォルトを犯した場面でラケットをコートに叩きつけるなど、メンタルを維持するのが難しかったようだ。

勝利のオンコートインタビューは、インタビュアーを務めた親友の奈良くるみとのハグに始まり、いつものように男前な土居が涙を堪えながらも力強い声を聞かせてくれた。「まさか、こんなことになるとは」と望外の勝利に震えながらも、次の試合を向いて気持ちを切り替えていたように思う。

ショーコートで行われた青山修子/柴原瑛菜と本玉真唯/内島萌夏の試合は、マッチタイブレークまでもつれたもののアオシバが辛勝。アオシバの出来は最悪に近く、青山はサービスでトスアップしたボールにスイングが届かない場面があり、柴原もファーストサービスがまったく入らなかった。柴原はサービスもリターンもインパクトの音が悪く、スイートスポットに当たっていない印象だったので、今後が心配だ。あれでは勝負にならないだろう。ただ、それでも勝ち切ってしまうのはさすが。ファーストセットのタイブレーク、そしてマッチタイブレークでの集中は素晴らしかった。

ダブルスの4人の中で、一番プレーが冴えていたのは本玉。今日のシングルス2回戦では女王シフィオンテクとの対戦が待っているので、好勝負を期待したい。