【フィギュアスケート】世界選手権2024 女子/ペアFS

さいたまスーパーアリーナフィギュアスケートの競技を生で見てから1年。今年はモントリオールに会場を移し、世界のトップ選手たちが戦いを繰り広げる。モントリオールのオーディエンスは熱狂的で、嬌声にも近い大歓声が沸き起こり、スタンディングオベーションも日本並。会場の入りは日本ほどではないものの、選手にとっては、モチベーションの上がる環境だったはずだ。

女子は、3連覇を目指す坂本花織がSP4位と出遅れた。千葉百音と吉田陽菜が揃って不本意な滑りに終わり、来季の世界選手権3枠のためにも失敗は許されない状況であり、プレッシャーを感じているであろうことは容易に見てとれた。これが影響したことは間違いなさそうだ。

FSでは千葉と吉田が巻き返し、キム・チェヨンもノーミスでまとめる中、坂本は相変わらず硬い表情ではあったものの、最初の2Aをいつものように完璧に決めると、その後も安定したスケーティングに基づいた圧巻のパフォーマンスを見せる。ジャンプも素晴らしいのだが、プログラムコンポーネンツで他を寄せ付けない圧倒的な強さを見せたことが大きかった。千葉と吉田が表彰台を狙うためには、音楽との調和やつなぎの部分の見せ方にこだわる必要があるだろう。

演技が終わった後には、オーディエンスが次々と立ち上がってスタンディングオベーションの輪が広がり、女王となることが確実になった坂本を祝福していた。

昨年のさいたまでも坂本はルーナ・ヘンドリックスのために、ベルギー国旗を持っている人を探していたが、今回は客席から差し出された星条旗を取りに行ってイザボー・レヴィトに渡していた。そんな坂本だからこそ、日本のスケーター仲間のために3枠を確保したかったし、応援してくれるファンのために3連覇を果たしたいという思いも強かったのだろう。それゆえのプレッシャーは並大抵のものではなかっただろうが、はねかえすパワーと実力をしっかりと見せてくれた。

ペアはSP2位のりくりゅうが、FSでは1位と巻き返したものの、SPの差を挽回できずに銀メダルとなった。ただ、復帰間もない状況で、演技後には木原龍一過呼吸で表彰式を欠席するような状態だったので、できたことを評価すべきだ。三浦璃来にとっては自身のジャンプの失敗がなければという思いもあるだろうが、その思いが今後へのモチベーションになればよいだけの話だ。