【ドラマ】GCHQ:英国サイバー諜報局

最近、英国とロシアの対立を扱ったドラマを見ることが多い気がするが、英国が製作に絡んだ国際モノであれば、仮想敵国はロシアが現実的なのだろう。サイバー攻撃による選挙結果の操作も出てくるが、これはまさにドナルド・トランプ民主党に対して主張している陰謀論にも通じる。プーチンを悪者にしつつ、トランプを揶揄しているようにも見え、それはまさに英国的なスタンスという印象だ。

主人公のサーラはインド系に見えたが、イスラム教徒という設定なので、おそらくはパキスタン系なのだろう。バイセクシャルでもあり、稀にではあるがアルコールも口にするというあたりは、ムスリマにしてはかなり攻めた設定と言ってよい。このあたりが、サイバー捜査を担当するサーラの現代的な一面を象徴している。ただ、周囲とは異なる価値観を頑なに譲らないところは、インド・パキスタン系のステレオタイプ的な描き方でもあり、ダイバーシティインクルージョンの意味からも残したということなのだろう。

画面に映し出されるコンピュータープログラムのコードには、かなりリアリティがあるし、ハッシュ値や「what3words」の使い方にも表面的でないしっかりとした考証が施されている。サイバー空間を扱いながら浅い描き方しかできない作品も多い中、骨太な印象も深みのある内容に仕上がったのは、この一面の掘り下げが大きそうだ。

邦題にわかりやすさを求める気持ちはわかるが、原題の「The Undeclared War(宣戦布告なき戦争)」の持つ深刻さを損ねる形になってしまったことは残念だ。サーラがGCHQを退職してしまう形でシーズンが更新されそうなので、シーズン2の日本語での扱いも悩ましいことだろう。