【映画】RRR

アカデミー賞で注目されたインド映画ということくらいしか認識がなかったので、もっとお気楽なエンターテイメントだと思っていた。実際のところは、インド映画らしい演劇空間を駆使した大作ではあったが、非常に重いテーマをしっかりと描く骨太な作品だった。そのテーマとは、大英帝国による支配と搾取からのインド解放だ。インドは元来、ガンジーの唱えた「非暴力不服従」の思想があり、これはヒンドゥーの教えにも近いと言われている。本作でも「耐える」場面が多くあるのだが、最終的には武器を手に入れ、「大義のために戦う」ことに向かっているところがメッセージなのだろう。

最近見たベツレヘムのストリートアートを扱うオンラインツアーでも感じたが、イギリスというか大英帝国の所業が歴史に残した負の遺産は多い。シオニズム運動の発展の背後にはナチスドイツをはじめとする反ユダヤがあることも事実だが、イスラエル建国のトリガーとなったのはバルフォア宣言であり、フセイン・マクマホン協定と合わせた英国の二枚舌外交の結果だ。インドはパキスタンバングラデシュミャンマーなどを含めた英領インドとして植民地支配され、富を搾取されてきたことは間違いない。本作でもヘナを芸術的に描く少女マッリを、2枚のコインを投げ捨てるように渡すことで「購入」したかのように拉致したことが、物語の端緒になっている。

いかにもインド映画らしく、スローモーションや群舞も駆使したフィクション満載の描写にはなっているが、それによって伝えられるメッセージは奥が深い。言い換えるなら、「大義があるからこそのアクセントを明確にした表現」ということだ。ボリウッド系インド映画の体裁を借りた、インド史の叙事詩とも言えそうに思う。そう考えれば3時間超も長くはないのだが、濃密な部分が多いだけに、閑話休題的な部分で冗長に感じるところもあった。まあ、それも含めてインド映画だと受け取るしかないだろう。