【ドラマ】伝えたかった、アイラブユー

コメディだと思って見始めたものの、2話目からはベルリンの壁崩壊やアフガニスタンなど歴史的事実を追いながら、相手に伝わらない家族愛をそれぞれの立場から描く骨太な展開に。そして、最後の最後で、やはりコメディだったのだということが明示されて終わるという、何ともフランスらしい壮大な作品だった。

1話30分強の全9話は合計すれば4時間半になるので、長編の映画を1本見ているような感覚になる。それほどに中身が充実しており、考えさせられる内容になっている。「あなたのため」とか「愛」とか、ドラマでは常にテーマとして取り上げられるが、普通は「独り善がりでは伝わらないよね」で終わってしまうところ、その心情を掘り下げることで、見る者が自身の経験を解釈し直すことができるような展開になる。僕は父親に対して心理面ではほとんど何も期待せず、反発して育ったのだが、彼が何を思って僕に接していたのかが何となく理解できたような気すらした。

ジャン・レノの演技は見事で、表情や台詞回しに引き込まれる場面が何度もあった。彼が演じたからこそ、偏屈な父親が子供に与える愛情の意味をポジティブに解釈できたのだろう。娘のジュリアを演じたアレクサンドラ・マリア・ララも、深みのある演技で父の愛情を受け止め直す心理がよく伝わってきた。

1話目を見ただけでは、この作品の意図や構成が十分に理解できず、コメディ要素も薄いので「1話切り」したくなってしまうかもしれないが、それでは本当にもったいない。ぜひ、2話目をじっくり見て欲しい。