【映画】ナイアド ~その決意は海を越える~

60歳を越えた女性がキューバからフロリダのキーウェストまで泳ぎ切るプロジェクトを、記録映像を交えながらドキュメンタリーのように追う物語。見るまでは、一度のチャレンジを追うだけと思っていたのだが、実際は失敗を重ねる経緯から描かれている。高齢故に次のチャンスがあるかどうかわからない中で、天候や海流の変化を読みながらの行動はまさにチームプレーだ。

チームの中心にいるのは、当然のことながらスイマーである主人公のダイアナ・ナイアド。自らを「CEO」にたとえる発言もあるほどに責任を追っているが、それが周囲には独善的に見えてしまう。スイマーが完泳してこそのプロジェクトであることは間違いないが、そのためにチームメンバーを死の危険に晒してしまってはチームが崩壊しかねないことは想像に難くない。

これはまさに、企業の姿を写しているとも言える。社長が自らの責任感で舵を取っていたとしても、権威を笠に着て横暴になっているように見えてしまいがちだ。これを防ぐためには、昨今はやりの「パーパス」のようにチームが目指す姿を可視化して共有する必要がある。いくら社長が優れていても、社員が同じ方向を向いて成果を出せなければ空回りするだけなのだ。

俳優陣の演技も素晴らしく、単に感情表現とか台詞回しに留まらず、自分が背負っている歴史や家族や借金などを含めた姿を重厚に表現している。アカデミー賞にノミネートされたアネット・ベニングジョディ・フォスターはもちろん、「ハリー・ポッター」シリーズでルーナ・ラブグッドの父親ゼノフィリウスを演じていたリス・エヴァンスが演じた航海士も見応え十分な演技だった。