【アカデミー賞】第96回授賞式

アカデミー賞は本来、内輪の表彰式だ。だから品のないジョークを連発しようが、個人名を並べて感謝を伝えたとしても、外部から文句を言われる筋合いなどない。しかし、今年の授賞式はかなり「見せる」ことを意識しており、自分たち以外の目に対する配慮を施していたように見受けられた。

例えば、プレゼンターとしてノミニーと同数の人数を揃えて、1対1でノミニーに対する賛辞を述べた後に受賞者を発表する形に変更した。それも、黒人同士やアジア系同士といったような属性合わせをあえて避け、ダイバーシティインクルージョンとしての見え方を目指した。それは結果的に、受賞者がどのプレゼンターからオスカーをもらうかとどのプレゼンターと喜びを分かち合いたいかの間に齟齬が生じ、ロバート・ダウニーJrやエマ・ストーンのように批判を受けるオチがついてしまったのだから、試みが成功したとは言い難い。

ここのところ韓国に押され気味だった日本勢も、「君たちはどう生きるか」と「ゴジラ-1.0」が受賞したことで息を吹き返した。残念なのは、「君たち~」のスタッフが誰も出席していなかったことと、「ゴジラ~」の受賞スピーチでの英語がカミカミで、メッセージが伝わらなかったこと。最後に女性の声で聞こえた「会場のみんな、東京のみんな、ありがとう!」という日本語の方が、ストレートで思いの伝わるものだった。

個人的に興味を持ったのは、プレゼンターとして登場したマイケル・キートンが"And the Oscar goes to"ではなく"The winner is"というフレーズを使ったこと。個性を発揮したとも言えるが、内輪のしきたりを破るのはかなり勇気がいる行為のはず。「バットマン」としてシュワルツェネッガーダニー・デヴィートに絡まれていたくらいなので、今回の授賞式での存在感は絶大だった。