【ドラマ】トランスアトランティック

「世紀の亡命プロジェクト」という副題がつけられているが、史実をベースに脚色した壮大なドラマということで期待した割には、思ったほどの壮大感ではなかった。「トランスアトランティック」というからには大西洋を渡るはずだが、マルセイユを起点にイベリア半島までで終わってしまっているし、マックス・エルンストシャガールペギー・グッゲンハイムといった実在の著名人物を登場させながら「チョイ役」で終わってしまっていることにも物足りなさがある。

そもそも「金持ちのアメリカ人女性がヨーロッパで人助けをする」という設定が、すでに共感を難しくしまっているようにも思う。時代背景としては「ナチス=悪」が前提なのでわかりやすいが、米国を含むアメリカ大陸が楽園であるかのように、そしてアメリカ人を過度にヒロイックに描くのは安易な対照ではないか。第二次世界大戦での米国の役割がその後のパクス・アメリカーナをもたらしたのは確かだが、それを市民レベルで語られると違和感を禁じ得ないのだ。

役者陣では、「ハウス・オブ・カード」でルッソを演じたコリー・ストールの渋い演技が光る。「ハウス~」ではもっとアクが強い印象だったが、年齢を重ねたことで余裕が醸し出されていて、内面に秘めたものを滲ませるような演技だった。アントマンの新作にもクレジットはされていないものの登場するようなので、気になっている。