【アカデミー賞】デル・トロ圧勝

90回となったアカデミー賞授賞式は、コンパクトにまとまってテンポよく進むショーだった。昨年は作品賞の受賞者を取り違えるという前代未聞のミスが起きてしまったが、今年はそのミスをネタにしてしまうあたりはさすがアメリカだ。ウォーレン・ベイティフェイ・ダナウェイを再び起用しただけでなく、「ラ・ラ・ランドって言わないように」とつぶやきながらプレゼンターがカードを開けたり、ミスをした会計士をネタにしてみたりと開き直りっぷりは盛大だ。

序盤は受賞者ではなく、プレゼンターで楽しませてくれた。ドラマ「シリコンバレー」のディネシュを演じるクメイル・ナンジアニのとぼけた語りや、「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」のロドリゴ役であるガエル・ガルシア・ベルネルの妙な存在感、そしてスターウォーズからはBB-8のキュートさも加わって、華やかなステージに仕立てられていた。日本人としてメイク・ヘアスタイリング賞を受賞した辻一弘も誇らしかったが、「神戸牛」が名前のルーツとされるバスケのスーパースターであるコービー・ブライアントの受賞もうれしい。

スピーチで印象に残ったのは、監督賞と作品賞に輝いたギレルモ・デル・トロと主演女優賞のフランシス・マクドーマンド。感謝する相手の名前をひたすら読み上げるのではなく、メッセージとして発信される言葉には重みがある。賞を得たものの責任を完璧に果たしたのは、この2人であると言ってよい。デル・トロのシェイプオブウォーター」に出てくる水棲生物は、ウルトラマンのラゴンとゲスラを合体させたような印象があるが、デル・トロは円谷英二を尊敬しているということなので、オマージュなのかもしれない。