【ドラマ】2034 今そこにある未来

近未来のディストピアを描いた英国を舞台とするドラマ。人種差別やハラスメント、利益誘導などドナルド・トランプを思わせる英国首相ヴィヴィアン・ルックを、「ハリーポッター」シリーズでトレローニー先生を演じたエマ・トンプソンが印象的な大げさな手振りを交えて怪演している。

プーチン習近平を「終身」政権と表現したことや、南シナ海の島を巡る米中の反目と核兵器による攻撃、ウクライナ難民の問題など、いかにもありそうで恐怖を感じるような要素を織り交ぜている。難民がドーバー海峡を過積載状態の小型ボートで渡ろうと試みて溺死してしまう部分なども、単に不法移民の侵入と捉えるのではなく、ヒューマンな視点で受け止められるような設定にしているところは秀逸だった。

また、自らの身体をデジタル化しようとする少女ベサニーの設定はピーター・スコット・モーガンの「Peter 2.0(NEO HUMAN)」に書かれていることに通じる。それは、遠い未来のようにおもえてしまうが、実際のところ現実がすでに追いついている世界と言ってよい。同性愛の問題も含め、異なる価値観を受け入れるかどうかで人間関係も変化するので、ダイバーシティインクルージョンは自身のQOLにも大きな影響を与えてしまうのだ。

途中で気づいてからは感心しきりだったのだが、この作品は日本語吹き替えのキャスティングが絶妙だ。個性豊かな登場人物一人ひとりの特徴を消さず、かつわざとらしくもなく仕上げてくれたのは、吹き替え声優たちによる貢献が大きかった。