【ドラマ】WITHOUT SIN 罪なき者

硬派な英国ドラマだが、役者の演技に現実味がある。娘を殺害された母親が真実を知るために行動する展開の中、法とか社会常識とかを超越して自身の強い思いで突き動かされる描写が素晴らしい。このようなシチュエーションでは、被害者サイドの思いは当然に強くなるはずだから、「警察が動いてくれない」という不満にもつながりやすいのだろう。その思いを否定することはできないが、個人的には受け容れられない。

真犯人が誰かなのか、視聴者も想像しながら見るわけだが、意図的に特定の人物を怪しげに見せる仕掛けも散りばめられている。そして、最後は想定の範囲にはありながら、「ああ、そう来たか」と思えるようなオチが待っていた。被害者の家族が前を向いて生きていくために加害者と面会するプログラムがこの物語の起点でもあり、そして終点でもある。起きてしまったことの意味を捉えなおして未来に生かすということは、日常生活においてもとても重要なこと。こういったプログラムを活用できるのは、ある程度成熟した社会ならではだろう。

主演のヴィッキー・マクルアの鬼気迫る演技も素晴らしいが、収監されている「加害者」を演じたジョニー・ハリスの存在感と何を考えているか読み取り難いポーカーフェイスぶりが印象に残った。舞台となるノッティンガムも、英国によくある普通の都市という設定なのだと思うが、この物語にはふさわしかったのではないかと思う。