【映画】ゲット・アウト

ドラマ「ファーゴ」を見ていて、チョイ役として出演していたジョーダン・ピールが気になってNetflixで配信している「ゲット・アウト」を視聴してみた。序盤から、主人公クリスの恋人ローズは怪しい雰囲気が全開だったが、その抱かせた疑念にしっかり応えてくれるところが映画としての本作の魅力のひとつでもある。

米国において人種問題は避けて通れない話題だが、パーティでも黒人をリスペクトしているような素振りを見せながら、興味本位で肌の色にまつわる話題を振るようなことはごく普通に行われているのだろう。日本で「触れてはいけない話題」のように扱われることとどっちもどっちであって、個性の一つとして捉えないとダイバーシティインクルージョンの視点にはつながらない。

本作では、白人の思考の根底にある「黒人の運動能力に対する憧憬」が描かれる。見下すような態度を取っていながら、例えば黒人選手がオリンピックのメダルを獲得することを喜んだり、応援するプロスポーツチームでの活躍に狂喜したりする。ただ、一方ではその圧倒的な身体能力を自分に対する攻撃として行使されることには、大いなる恐怖も感じているのだ。白人が持つ「いいとこ取り」の思想をブラックなパロディに仕立てたところに、本作の意図があるのではないだろうか。

ローズの父親ディーンを演じるブラッドリー・ウィットフォードは「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」のジョゼフ・ローレンス司令官が記憶に残っているが、このような利己的な価値観に染まり切った悪役はハマり役だ。ローズを演じたアリソン・ウィリアムスも「レモニー・スニケットの世にも不思議なできごと」でのキット役同様、知的な風貌に怪しさを纏った彼女らしい役柄を好演していた。