【映画】M3GAN

2つめの文字が「3」なのは、ミーガンが「Model 3 Generative Android」の略だから。見始めて最初の部分では、あまりに製作側に都合のよい展開にB級感が滲み出ていた。これは期待できないかと不安があったのだが、ストーリーの中に籠められたメッセージが解き明かされるにつれて見応えが増していった。

アンドロイドというか、AI全体に言えることなのだが、いわゆる「教師データ」や設定されたアルゴリズムの下に思考し、行動することになる。例えば自身の宗教が持つ価値観に盲従してしまった結果、社会にとってネガティブなインパクトを与えてしまうことがあるが、これと同じことをAIが実行してしまうのだ。裏を返せば、人間は「判断が揺れるからこそ価値がある」ということで、もっと言えば「忖度することに価値がある」とも言えるかもしれない。

米国を中心に、映画やドラマでは「家族のため」とか「あなたのため」といったロジックで、エゴに満ちた行動をすることが善とされる傾向がある。これは米国が開拓しながらコミュニティを成長させてきたことや、主要な移民が持ち込んだ宗教観に影響を受けているが、AIは結局、そのエゴを是認する以外の選択肢を持たない。現在の人間社会以上にエゴ同士がぶつかり合ってしまっては、その社会が向かう方向は危険に満ちてしまうだろう。

この作品で演技が光っていたのが、ケイディを演じたヴァイオレット・マッグロウであることは疑う余地がない。M3GANが彼女の表情から感情を読むのだが、いかにもそれを妥当なものとわかるほどに絶妙な表情の変化を見せてくれる。12歳でこれだけの演技をこなしてしまう実力は驚異だが、ここからどう成長してゆくかは本人だけでなく、周囲にも影響されるはず。ぜひ、道を誤らずに大成して欲しいものだ。