【ドラマ】アッシャー家の崩壊

エドガー・アラン・ポーの短編小説をモチーフにしたホラー仕立てのドラマだが、その中に籠められたメッセージは奥深い。家族の問題やオピオイド依存症、会社経営などにも表面的とは言えない深さで触れているが、「人生の豊さとは何か」という命題に対して強烈な主張が明確に打ち出されている。金や出世では語れない「豊かさ」が語られるが、価値観が異なる人種にはなかなか通じない。それは世の中一般的に、よくある話でもあるだろう。

そして、自分が望む「豊かさ」を得るためには代償を伴う。金のために家族を捨て、愛のために名誉を捨てる。どちらも得るということはできないし、できたように見えても、それはどちらも中途半端なままだということだ。自分の生活と価値観を振り返ってみると、自分が興味ある様々なことに使う充実した時間が「豊かさ」のように思えるが、そのために犠牲にしたのはキャリアや金への執着なのかもしれない。だとすれば、それは自ら望んだことなので、まったく問題はない。

舞台となるアッシャー家を仕切る双子の兄妹を演じるブルース・グリーンウッドメアリー・マクドネル。グリーンウッドは「レジデント」のベルであり、マクドネルは「Major Crimes」のレイダー警部だ。演技力のあるこの二人による二人芝居の部分もあり、見応えは十分。アッシャー家の子どもたちは、とにかくクセが強く嫌な奴らなのだが、それをいかにもというくらい「嫌な感じ」で演じている俳優陣にも注目したい。