【映画】グリーンランド -地球最後の2日間-

サブタイトルがなければ、極北の大地を目指すロードムービーのような印象を受けるが、実は彗星クラークが地球に衝突するという災害型スリラーだ。米国政府が極秘裏にグリーンランドに設置していたシェルターに「選抜者」だけが避難できるという設定で、何とか避難便に割り込もうと基地に押し寄せる非選抜者、選抜されながら子供の持病のために搭乗を断られてしまった一家、選抜者のリストバンドを強奪しようとする夫婦らが入り乱れてエゴをぶつけ合う。

製作陣がこの作品を、「他人を押しのけてでも自分の家族を守ろうとする一途な家族愛の物語」と位置付けていたとしたら大きく外しているとしか思えないが、さすがにこれは「やりすぎな家族のエゴイズム」をどう受け取るかを問うているのではないか。与えられた状況を受け入れずに闘うのはハリウッド映画の定番ではあるが、その究極の結果はこの作品に描かれているようなエゴのぶつかり合いになる。スーパーやガソリンスタンドの物資は持ち去られ、自分の家族のために他の多くの人を危険に晒す。少なくとも日本人の共同体意識とは、まったく異なる価値観だ。

グリーンランドは、最後の最後でようやく登場する。以前、何かの本で読んだ「グリーンランドという名称は、デンマーク人の移住を促すために、アイスランドとは違って美しそうなイメージを選んだ」という話を覚えていたが、映像に出てきたグリーンランドは本当に美しい緑の島だった。もちろん季節によるのだろうが、こんなに木々が生い茂っている様子が俯瞰できたら、それは素晴らしい体験だろう。大災害の後なら、間違いなく心は安らぐはずだ。