【東レPPO】二宮真琴/穂積絵莉―エイケリ/ニール

この日の東レPPOはシングルス準決勝2試合とダブルス決勝が行われたが、テニスの面白さと怖さを味わえる内容だった。シングルス準決勝の第1試合はパブリウチェンコワとクデルメトバの対戦。僕としてはシフィオンテク見たさにチケットを購入していたので、正直なところ残念なカードになってしまった。

内容はというと、パブリウチェンコワがダブルフォルトの山を築き、クデルメトバもサーブに波があってもつれる展開。3時間半に及ぶ大熱戦という表現もできるが、思い入れのない選手同士の対戦で、ウィナーではなくミスでしかポイントが入らないテニスが長々と続くのは、ある意味苦痛でしかない。

準決勝第2試合はサッカリとペグラ。体がキレて好調だった土居美咲を下したサッカリだったが、この日のペグラの前には屈服するしかなかった。見た目には目立ったストロングポイントを見出しにくいペグラだが、判断の早さと予測力、そして狙ったところに落とすプレースメントの正確さが圧倒的で、基本に忠実なテニスともいえる。それはつまり、基本をその通りに実践できるだけの心身のスキルということなのだろう。

試合終了後にサインボールを求めて男子高校生が集団で盛り上がっていて、そこを狙った打ち込んだペグラのボールは2球とも手前に落ちてしまった。するとペグラは手早く別のボール3球にサインを走らせ、あらためて打ち込みを始める。最後の1球を再び高校生集団に向けて打ち込むと、今回は狙い通りに集団に届いた。そのときのペグラの笑顔が素敵だった。

ここまででかなり時間が押し気味だった中、サッカリに敗れた2回戦をもって現役引退した土居美咲のセレモニーがこのタイミングで開催された。親友でもある奈良くるみのメッセージに続いて、土居が感情を押さえながらスピーチをするまではよかったが、いかんせんカメラセッションが長すぎた。かなりの大人数となったカメラマンが、それぞれに目線を要求する中で、観客が白けてしまっていたことに関係者は気づいていたのだろうか。

運営面で言えば、芸能番組のようなオンコートインタビューも相変わらずだが、チャレンジシステムの不調も恥ずべき点だ。この日の準決勝も、第1試合の終盤まで使用できず、ファーストセットでクデルメトバがチャレンジを申請していたのだが、主審に説明を受けて却下されていた。この日以前にも使えない場面があり、また使えても反応がとにかく遅い。技術大国のはずの日本の大会で、こんな不手際があるのは何とも情けない限りだ。

そして個人的には今日のメインだったダブルス決勝は、二宮真琴と穂積絵莉がエイケリとニールに挑む。ファーストセットこそ快調な滑り出しを見せた二宮/穂積組だったが、ダブルスはすぐに流れが変わる怖さがある。面白いように決まっていた二宮の「高速ロブ」が決まらなくなり、相手ふたりの間を狙った深いショットもロングになる。これらは、相手が対策してきたというよりは、二宮のメンタルの問題のように見えた。

それでもセカンドセットでは、ディサイディングポイントを含めて2つのマッチポイントを握ったのだが、ここで取り切れなかったことが最後まで響いた。それでも有明コロシアムセンターコートは、シングルス2試合を上回る、この日一番の盛り上がりだった。