【英国王室】戴冠式コンサート

ウィンザー城で5月に開催された戴冠式コンサートを、ようやくWOWOWが放送してくれた。何よりオープニングから英国の伝統とはかけ離れたキャスティングと演出で、「伝統は守りつつも、こだわらずに新しいものを取り入れる」というチャールズ3世の志向に合わせた内容になっていたことが興味深かった。

その象徴となったのは、ロイヤル・コラボレーションと銘打ったステージ。ロイヤル・オペラとロイヤル・バレエ、それにロイヤル・シェイクスピア・カンパニー、ロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージックとロイヤル・カレッジ・オブ・アートのコラボレーションで「ロミオとジュリエット」の一部が演じられたのだが、かなり現代的でポップな演出だった。合唱がマイクを持っていたことに違和感があったが、これだけの広い野外ステージで反響版もない中ではやむを得ない。

税金の支出に対する英国民の反発もあって、出演者のキャスティングには苦労していたようだが、それでもアンドレア・ボチェッリやライオネル・リッチーなど大御所を中心に、なかなかのラインナップとなった。存在感の主役は圧倒的にケイティ・ペリーで、トリのテイク・ザットは英国のミュージシャンながらを完全に食われていた。ラン・ランのピアノはソロだけでなく、ニコール・シャージンガーの呼び込みや伴奏まで担当したことには驚いた。MCを務めたのは、「ダウントン・アビー」でグランサム伯爵を演じたヒュー・ボネヴィル。安定感たっぷりの余裕を感じさせたが、カンペを見ながらのトークには若干ムラもあったのはご愛敬だろう。

ウィリアム皇太子のスピーチに続けて、会場が声を揃えて"God Save the King"を唱和したところに、英国らしい伝統と文化が感じられた。このあたりが、日本の皇室に通じる部分でもあり、両国が親近感を抱く根源になっているのだとあらためて思う。