【カリビアンOP】錦織圭―マイケル・ゼン

錦織の準々決勝から準決勝にかけての重苦しい動きは、マイケル・ゼンとの決勝の舞台では少しだけ改善されていたように見えた。準決勝で追いつけなかったり振り遅れたりしていたプレーが決勝では対応できていたが、錦織の体のキレだけの影響ではなく、ゼンのショットのパワーが少しだけ弱かったことにも助けられていた。そして、ナイトマッチではなくデイライトマッチだったことも、ポジティブな影響を錦織に与えていた のではないだろうか。

ファーストセットは比較的楽に取り、セカンドセットも盤石な流れに乗っていたが、サービング・フォー・ザ・マッチを迎えてから2つのブレークを返され、5-5のイーブンに戻ってしまう。何となくの印象だが、錦織はまだ余力があることを察知して、ゼンとの公式戦でのヒッティングを楽しんでいたのではないか。バックハンドのラリーからフォア側に来たところで一気に決めに行くかと思いきや、普通にラリーを続けた錦織。その姿からは「このゲームを何が何でも取る」という雰囲気は窺えなかった。懐かしい試合の感覚をもう少し楽しみたいという思いも、ゼロではなかったのではないか。

マイケル・ゼンのような似たタイプは、疲労の蓄積した錦織には戦いにくいのではないかと思っていたが、パワーで押してこないだけ時間が稼げた。準決勝以降にリカバリーがうまくいったということなのだろうが、決勝の組み合わせは結果的に錦織に有利に働いたということだろう。ワイルドカードとプロテクトランキングを駆使してゼロになったポイントを取り返してゆく道程は長いが、見る側としては楽しみにしておこう。