【コミック】Blue Giant Explorer (8)

映画公開で早々に売れてしまったのか、書店で見当たらずにそのまま読んでいなかった第8巻をいまさらではあるが買って読んだ。今回はニューオーリンズでのライブと、その後のマイアミを描いている。僕の読みではアメリカ音楽の源流を辿るメンフィス~ナッシュビルだったのだが、観光地としてのフロリダを選んだ意図はエピソードの描き方でよくわかる。観光地マイアミのジャズクラブに集まるオーディエンスは、生粋のジャズファンというよりも「ジャズも聴く」観光客。そんなオーディエンスに対して、演者は何をどうパフォームするのか。「自分が聴かせたい音楽」を聴いてくれない客に対するアプローチは、プロのミュージシャンにとっては大きな悩みだろう。

それ以上に、僕が考えさせられたのは、「ゲスト奏者は与えられた枠の中で仕事をすればよいのか」というテーマだ。ゲストは本来、ホストの添え物であるはずで、その視点からは「おとなしくしていればよい」ということになる。一方、ホストの魅力を増すためにゲストが呼ばれたと考えれば、ゲストの持ち味を発揮してこそ意味があるというもの。そしてこのテーマはミュージシャンに限らず、社会人として仕事をしている人にとっては応用問題になりそうだ。

宮本大のこの場面においては、ホスト側の言いたいことはわかる。ソロの時間を無制限に吹きまくられるとスケジュールが乱れてしまうので、いろいろな人に迷惑がかかる。時間に対する感覚が鋭い僕にとっては、予定時間に終わらないミーティングや飲み会は非常にストレス。要は「いつ終わるのかわからない」というアンコントローラブルな状況が好きではないのだ。ジャズクラブを訪れるオーディエンスのすべてが「上質なソロを長く聴きたい」と思うわけではない。そしてそれは、最初に挙げた「何を聴かせるか」にもつながってくる。