【フィギュアスケート】国別対抗戦2023 Day-3

「国別対抗戦」という呼称は堅苦しいが、英語の"World Team Trophy"とすれば団体戦としての雰囲気が増すかもしれない。会場となった東京体育館は、さいたまスーパーアリーナと比べると小さく、観客数も少ないはずだが、より熱量の高いファンが集まったことと各チームの盛り上がりで独特の雰囲気を醸し出していた。

ペアのFSは、僕が思っていたよりレベルの高い内容。世界選手権で「りくりゅう」が金メダルを獲得したことは、オリンピック後に全体的なレベルが下がった影響もあると思っていたのだが、実際に生で見てみると三浦璃来と木原龍一が成長したことを実感するしかなかった。生で見ると、男性がリフトの際にどう力を入れるか、女性とどう息を合わせるかといった部分がよくわかる。ペア競技は、失敗すると相手の競技生活を台無しにしかねないだけに、このあたりが非常に重要でもあり、選手が気を遣う部分なのだということを理解できた。

三浦/木原組の演技も素晴らしかったが、アレクサ・クニエリム/ブランドン・フレイジャー組は明らかにそれを上回った。リフトやスピンのポジションや移行のスムーズさにおいて一段高い技術を見せつけられ、さらにアレクサの華やかな表現力には魅了されてしまうほど。優勝インタビューでは、日本語で話すジェイソン・ブラウンに割り込んで「ワクワク!」と一言だけ日本語を披露したアレクサの笑顔が印象的だった。

男子FSは、SPでプレッシャーなくのびのびと演技した選手たちが、気負って失敗するパターンが続いた。イリヤ・マリニンもケビン・エイモズもSPがよかっただけに期待も大きかったのだが、それは本人も同じだったようで、その重圧に自ら崩れてしまったようだ。アダム・シャオ・イム・ファもマイムやスピンなどの要素では圧巻の演技を見せながら、ジャンプが決まらずに残念な結果になってしまった。

そんな中、注目が集まったのは、今季で引退するキーガン・メッシングの最後のFS。6分間練習で前に転んでしまい、ビニールテープをスケート靴の上部に巻き付ける応急措置をすると、その後のウォームアップはほぼ滑っているだけで、演技できるのかと心配していた。しかし、始まってみればいつものように全力で爆走し、ジャンプも決まる。終盤には彼の代名詞でもあるハイドロ・ブレーディングも見せ、東京体育館をホームアリーナのような雰囲気に盛り上げてくれた。

もうひとり、渾身の演技を見せてくれた選手がいる。宇野昌磨の代役として急遽出場が決まった佐藤駿は、SPではいまひとつの出来で6分間練習でもジャンプでの転倒が相次いでいたのだが、実際のFSの演技では見事な集中でできることをすべて表現してくれた。途中に両足着氷がひとつだけあったものの、最後のジャンプを下りた際にはガッツポーズも見せたので、おそらくは自分でも満足できる内容だったのだろう。佐藤の活躍で刺激を受けた友野も気負って失敗した感はあるが、彼らしいステップは堪能させてもらえたのでよかった。日本の3位という結果には物足りなさも感じるが、これまで日本が享受していたフォーマットの利点を韓国に持っていかれたということなので、納得するしかないだろう。