【アカデミー賞授賞式】アジア系旋風

第95回アカデミー賞授賞式は「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」の圧勝となり、言い換えるならアジア系が脚光を浴びる結果で終わった。監督賞も受賞した「ダニエルズ」こと2人のダニエル、クワンとシャイナートは何度もステージに上がることになったが、特にダニエル・クワンが序盤から関係者が受賞するたびに本当にうれしそうな表情で見送っていた様子が印象的だった。自らがステージに上がってからは、思いがつのり過ぎてよくしゃべったが。そのメッセージもまた聞いていて好感の持てる楽しいものだった。

ジミー・キンメルが昨年のウィル・スミスをおちょくるようなコメントから始まった授賞式は、ドルビーシアターを埋めるスターたちで華やかな雰囲気。助演男優賞を受賞したキー・ホイ・クァンが感激している様子を見るだけで、こちらまでうれしくなってしまう。「グーニーズ」や「インディ・ジョーンズ」に出演していた子役だった彼が、作品賞を発表するハリソン・フォードと並んでいる姿も時空を超えた感覚で微笑ましかった。ところで、うれしそうな彼の容貌が大村崑に見えてしまったのは、僕だけだろうか…

アジア系旋風のもうひとつの象徴は、主演女優賞のミシェル・ヨー。発表を待つ間に隣の人たちと手をつなぎ、その瞬間を待っていたミシェルは、力強いメッセージで自らの受賞を祝った。アジア系女性としての誇りを示しつつも、「オスカーは希望であり可能性。夢を大きく持てば叶う」と若い世代にエールを送った彼女の言葉と表情には、強い意志が籠められていた。

一方、「西部戦線異状なし」と「ナワリヌイ」の受賞も今の時代を象徴していた。ウクライナ侵攻の終わりが見通せない現在において、これらの作品を通じたメッセージをしっかりと受け止めることも、僕たちの義務のような気がする。その意味も含め、いろいろなメッセージがうまく組み合わされていたアカデミー賞授賞式だった。